話題の映画「翔んで埼玉」は、奇妙でパワフルな一体感を巻き起こす映画だった。
今回は、そのストーリー、魅力、学びを整理していきたい。
「翔んで埼玉」あらすじ
「埼玉県民が東京都民に迫害を受け、身を潜めて暮らしている」
という設定の(仮想)日本国。
物語の舞台は、東京のトップ高校である「白鵬堂学院」。
そこでは、生徒の「都民度」によってクラス分けがなされており、
青山や赤坂を頂点とした「居住地カースト」が敷かれている。
そこの頂点に立つ生徒会長「壇ノ浦百美(二階堂ふみ)」は
アメリカ帰りの転校生「麻実麗(GACKT)」と出会う。
はじめは敵対するも、優秀なお互いに惹かれ合っていく二人だが、
実はとんでもない秘密があった。
麗は埼玉県民だったのだ。
東京都民と埼玉県民は交じり合えない運命なのか。
百美と麗は引き裂かれ、ついには千葉県勢も巻き込んだ大きな戦いが
勃発する中、二人は、埼玉県民の運命はどうなるのか。
花男と、帝一の國と、ロミオとジュリエットと、そこら辺をミックスしたような設定である。
小ネタも含めてやりたい放題感が始終あふれていた(誉め言葉)。
主要登場人物
壇ノ浦百美(二階堂ふみ)
東京屈指の名門、白鵬堂学院の生徒会長。
東京都知事の息子というステータスも相まって、学園のカーストの
頂点に立つ。
また、埼玉県民をゴキブリかのような扱いで虐げている。
転校してきた麻美麗を懐柔しようとし、失敗してからは目の敵に。
その後は、麗に強く惹かれていき、ついには埼玉入りに向かうが・・。
名台詞は「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」
麻実麗(GACKT)
アメリカから 白鵬堂学院に転校してきた美形の男子生徒。
百美をも上回る圧倒的都会度で学園を騒然とさせるが、
その裏向きの姿は埼玉県の地主の息子であり、
「埼玉解放戦線」のメンバー。
ちなみにGACKT様は最初にこの役のオファーが来た時に、
「高校生」という設定だと聞き、「自分の年齢でやるのは無理がある」と
ソッコー断ったらしい。
ただし作品自体が無理の塊だったため依頼を受けたとのこと。
阿久津翔(伊勢谷友介)
映画のオリジナルキャラクターであり、原作には登場しない。
百美の父親であり東京都知事の壇ノ浦建造邸に仕える、優秀な執事。
これ以上は映画を観てのお楽しみ。
GACKTと伊勢谷友介の共演は目にやさしい。
埼玉デューク(京本政樹)
伝説の埼玉県人。
東京で虐げられていた埼玉県人を集めてクーデターを
密かに企てていたが、何者かの妨害にあって行方不明になっている。
GACKTとは初対面であり、GACKTが京本の楽屋に挨拶に行った際に
「やっと会えたね!僕ら同じジャンルだよね」と声をかけたという。
鑑賞中の映画館の様子
映画館は頻繁に笑いが起きていた。
この感覚・・どこかで・・・と思ったが、「カメラを止めるな」以来の
一体感だ(案外直近)。
ただ、「翔んで埼玉」の場合は「笑いが起きるタイミング」が、
これまで見た映画と比べてかなり特徴的だった。
純粋に笑えるシーンや、あるあるネタとして完成度が高いシーンで
笑いが起きるのは分かる。
しかしそれだけでなく、
「今、単語出しただけだよね?」「まだオチ言ってないよね?」
のようなところでも笑いが生まれるのだ。
こ、こんなの反則じゃないか。
何をやっても正義。
考えてみると、これは「翔んで埼玉」という映画が「愛あるイジリ」の条件を
クリアしたことで、非常に強いコンテンツとなったからこその現象なのだと気づいた。
ということで、後半からは、この映画の成功要因である「愛あるイジリ」と
その強さについてまとめていきたい。
翔んで埼玉の「愛あるイジリ」とは
この映画の根底にある「愛あるイジリ」とは、下記の要素を
満たしてこそはじめて成立するものだ。
①コンテキスト(文脈)が共有されている
②誰も傷つかない
①の「文脈が共有されている」については、一言でいえば
内輪ネタ、暗黙の了解としてルールが出来上がっていること。
暗黙の了解が出来ていることで、相手の発言内容についての是非は
さほど重要視されず、 「お決まりのやり取りをすること」そのものが面白い、
という現象が生まれるのだ。
多少のネットリテラシーは必要かもしれないが、日本人なら
「埼玉」が持つ焦燥感や開き直り感、そしてグンマ―の
有無を言わさぬコンテンツ力はすでに植え付けられているだろう。
なんせ、埼玉への「愛あるイジリ」を全国区にしたのはあのタモリさんらしい。
1980年代の竹の子族を指して「ださいたま」というパワーワードを
生み出し、全国放送で連呼したことで火が付いたそうだ。
この「翔んで埼玉」の元となった漫画も1980年代のもの。
さいたまイジリは歴史が深く、そういう意味で今回は
「文脈が共有されている」テーマだったといえる。
②の誰も傷つけないについては非常に重要で、①で生じた内輪ネタが
誰かしら(イジられた対象)を傷つけるものでは、「愛あるイジリ」にはならない。
例えば、お決まりのイジリが発生した際に、 いじられる対象が実は嫌がっていた、
という場合は、「愛のあるイジリ」ではなく集団によるイジメだ。
この映画も、仮に埼玉県民が著しく気分を害すものだった場合、
そこに相互の愛はなくなり、もっと物議を醸しだしていたはず。
ただしTwitterでの反応を見る限り、好意的な反応が目立っているようだ。
キチンと愛あるイジリが成立した映画という訳である。
勿論、この映画はイジリだけでなくちゃんとストーリーも面白いし、
「出身有名人バトル」など小ネタも随所に効いていることも伝えておきたい。
翔んで埼玉に学ぶ
この愛あるイジリが成立すると何が強いというと、細かい仕組みや説明をカットしても
強力なコンテンツとして成り立つことなのだ。
文脈が共有されているから理屈はいらないし、誰も傷つけないから見た人は笑える。
しかも不特定多数の人を巻き込み、盛り上がりを拡大できる。
ある種の反則的な強さを持つコンテンツなのだ。
埼玉が東京に反逆する。グンマも出るよ!
なんて説明しても、前提の文脈共有や理解がなければ
面白さのニュアンスすら伝わらないだろう。
「は?俺らをバカにしてるの?」で終わりである。
弱みを逆にブランディングに使い、「愛あるイジリ」を生み、
そしてコンテンツに昇華する。
それが生みだすものは強いな・・と考えさせられた。
僕も、この「翔んで埼玉」から学んだことを活かして、
抱え込まずに弱点をアウトプットをしていこう。
そして、コンテンツ化してしまおう。
自分の弱点をさらけ出せる人って、説明抜きに周りが
活かし方をわかってるし、逆に仕事で活躍している印象だし。
ということで、明日からは僕も職場ではプライドを捨てて
ゴリゴリの自己ブランディングをし、愛され狙いでいきたいと思う。
まずは声に出していくところから、イメージを固めるぞ。
「埼玉出身なので早退します」
「あ、やってないです。埼玉出身なので」
・・・やり方は要検討したい。
さて、興味があれば、こちらの映画もオススメさせて欲しい。
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